移転価格税制とは、親子会社やグループ会社など関連企業の間で取引を行う際、その取引価格を「独立した企業同士の取引価格(独立企業間価格)」に一致させることを求める制度です。中国では企業所得税法第41条から第48条に定められており、税務当局は独立企業間価格との差額を課税所得に加算できます。

中国に進出した日系企業は、取引規模にかかわらずこの制度の対象になります。さらに一定の金額基準を超えると「同期資料」の作成・保存が義務付けられ、税務調査の際に提出を求められます。

一、中国で作成が求められる3つの文書(同期資料)

中国では、国家税務総局公告2016年第42号に基づき、関連取引の規模に応じて次の3種類の文書を作成します。

文書作成義務の基準主な内容
マスターファイル年度の関連取引合計が10億元超、かつ越境関連取引がある場合グループ全体の組織構造、事業内容、無形資産、資金調達、税務ポジション
ローカルファイル有形資産の移転 2億元超/金融資産の譲渡 1億元超/役務提供・無形資産の使用権 4,000万元超中国法人の関連取引の詳細、採用した価格設定方法、比較対象企業の分析
国別報告書グループの連結売上高が55億元超で、最終親会社が中国居住企業の場合国・地域別の収入、税引前利益、納税額、従業員数など

金額基準は「いずれかを満たすか」で判定します。日本の本社が最終親会社であれば、国別報告書は日本側で提出する立場になりますが、中国子会社側でも関連情報の整理は必要です。

二、作成・保存と提出の期限

マスターファイルとローカルファイルは、企業所得税の年度申告期限(翌年5月31日)までに作成し、保存しておく必要があります。税務当局から提出を求められた場合は、30日以内に提出しなければなりません。

「調査が来てから作る」では間に合いません。比較対象企業の選定やベンチマーク分析には、それなりの時間がかかるためです。

三、調査された場合のリスク

1. 追徴期間は原則10年

特別納税調整による追徴は、原則として10年前までさかのぼることができます。通常の税務調査(3年・5年)より長い点に注意が必要です。

2. 利息が加算される

追徴税額には、基準貸付利率に5ポイントを加算した利率で利息が課されます。本税に対して相当の上乗せになります。

3. 文書の未作成自体がリスクになる

作成義務があるのにローカルファイルを用意していない場合、それ自体が調査の端緒になります。内容の妥当性以前に、「用意があるか」が見られます。

四、実務でつまずきやすいポイント

  • 比較対象企業の選定:中国のデータベースから適切な比較対象を選べるかどうかで、分析の説得力が変わります。
  • 機能とリスクの分析:現地法人が「単純な受託製造」なのか「販売機能を担う」のかで、目標とすべき利益率が変わります。
  • 本社側の文書との整合:日本で作成したマスターファイルと中国側ローカルファイルの記述が食い違うと、説明が崩れます。
  • 赤字の説明:連年赤字の現地法人は、「なぜ赤字なのか」を移転価格の観点から説明できるようにしておく必要があります。

五、DENCHIの支援内容

DENCHIは、これまで数十社の移転価格文書作成と、複数社の正式な税務調査対応に関わってきました。

  • 移転価格文書(マスターファイル・ローカルファイル)の作成
  • ベンチマーク分析、比較対象企業の選定
  • 税務当局からの照会・調査への対応
  • 事前確認(APA)の検討支援

「文書を作ったことがない」「本社と中国側で言っていることが違う」という段階からご相談いただけます。

DENCHI(「デンチ」)は財務・会計・税務・税関を専門とするコンサルティング会社です。
◆ コアメンバーは四大会計士事務所、大手日系企業或いは税務機関出身のOB/OGの集まりです。
◆ 2013年の設立以来、深セン・広州・東京の3拠点に100名以上の専門家が在籍し、中国公認会計士8名・中国公認税理士5名が在籍しています。
◆ 数多くの日系企業に税務調査対応、移転価格、会社再編などのサービスを提供してきました。
◆ 実行性の高いアドバイスを提供することを特徴としています。

財務・会計・税務・税関に関するプロフェッショナルなサポートをお求めなら、ぜひ私どもにお気軽にご連絡ください。